2006年2月のこびん

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<第0278号 2006年2月26日(日)>

       ずっと

         その花を見たいから
         
         ただ
         それだけのために
         
         ずっと
         ずっと
         
         陽ざしのなかを
         歩いてゆく


   * 挿一輪 *

 カンザクラ。
 2月の終わりから3月の初め。
 梅かなと思う時期に、花開くサクラ。
 
 去年は暖かだったせいか、
 2月の半ばすぎには、もう散りかけていました。
 
 今年は寒いせいか、
 先週、見にいったなら、まだつぼみ。
 
 でも、つぼみ、ふくらんでいました。
 もうすぐかな。
 
 そして、昨日。
 
 家から歩いて、約30分。
 カンザクラに会いに行きました。
 
 前日の雨が上がって、青空と白い雲。
 わざわざ歩いてゆくのは、
 会うまでの、ワクワク感が大好きだから。
 
 そして、
 そんな気持ちで歩いていると、
 かならず、ほかの出会いが見つかるから。
 
 
 あなたが、もし大切な人と会いたいのなら、
 きっと、そのためだけで、出かけると思います。
 
 前の日から、
 いえ、もっと前から、その日のことを思って、
 準備をして、思いを寄せて。
 
 ただひとつのことのために、
 あなたの大切な時間を、すべて使う。
 
 忙しい毎日のなかで、
 たくさんのことを、
 並行処理しているあなたにとって、
 とても、贅沢なことかもしれません。
 
 ただひとつのことのために、
 ずっと、ずっと、歩いてゆく。
 その、ひたすらの、大切さ。
 
 次の休みのときでもかまいません。
 だれかに、いえ、なにかに、でもいいのです。
 
 ただ、会いに行くために、
 あなたの1日を、使ってみてはいかがですか?


<第0277号 2006年2月23日(木)>

       春

         もう
         そこまで来ているから
         じっと待っていないで
         歩いてゆこう
         
         再会は
         こちらから
         声をかけてみたいから


   * 挿一輪 *

 三寒四温をくりかえしながら、
 春は、そこまでやってきています。
 
 からだのどこかで、うすうす感じていながら、
 春を見つけるには、こつがいります。
 
 知りたいなと思って、探さないと、
 なかなか姿を見せてはくれません。
 
 春のほうから、肩をたたいてはくれません。
 
 たしかに、春らんまんの季節になれば、
 目をつぶっていてもわかりますが、
 春を、だれよりも早く感じたいと思ったなら、
 五感を研ぎ澄まして、
 こちらから、会いにゆく必要があります。
 
 
 一年ぶりの再会。
 まるで、むかしからの友人に、
 久しぶりに出会うような、
 うきうきした気持ち。
 
 そんなとき、
 相手から、声をかけてもらうのを待つより、
 こちらから先に、声をかけてみたいと思いませんか。
 
 やあ、お久しぶり。
 こんなところにいたなんて。
 ずっと会いたかったんだけれど、
 やっと会えたよ、って。
 
 あなた自身はどうですか?
 やはり、声をかけられた方がうれしいでしょう?
 
 ずっと待ってくれていたんだな、って。
 愛に来てくれたんだな、って。
 
 その気持ちがあれば、
 あなたが大切に思っているもの、
 早く出会いたいと思っているもの。
 
 こちらから、五感を総動員して、
 だれよりも早く見つけ、
 声をかけると、喜ばれます。
 
 春であれ、夢であれ、大切な人であれ、
 じっと待っていないで、
 こちらから歩いていって、
 声をかけてあげる。
 
 だれよりも、早く会うことができますから。


<第0276号 2006年2月19日(日)>

       メントール

         ツーンと
         目が覚める
         
         薄荷をひとつ
         いつでも
         ポッケに
         
         くじける前に
         こころに
         ポイ


   * 挿一輪 *

 眠気覚ましにメントール。
 薄荷のツーンとくる成分名です。
 
 お祭の縁日の薄荷パイプ。
 鼻の奥の刺激が、なつかしいですね。
 
 薄荷ドロップもありました。
 佐久間ドロップ、知っていますか?
 
 メントール入りのガムも。
 こちらは、ロッテのクールミント。
 
 
 胃の薬にも入っています。
 メントールの結晶をつぶして、
 大きな乳鉢でゴリゴリ混ぜて。
 
 のんだときにスッとする、
 胃の粉薬を毎日のように作っていました。
 
 
 どこかすっきりとしないときに、
 メントールは効果ありです。
 気分転換には、もってこいです。
 
 そんなわけで、
 いつも薄荷を、ポッケにしのばせて、
 すっきりしたいときに、
 こころにポイ。
 
 さわやかな気分で、
 立て直しができそうですね。
 
 今度は、きっとうまくいきますよ。


<第0275号 2006年2月16日(木)>

       蒸留

         ザッザッザッと
         砂利道を歩いた
         
         ザッザッザッと
         砂利を踏み続けた
         
         足から体が揺さぶられ
         悔しい思いが浮いてきた
         体のなかから浮いてきた
         
         ザッザッザッと
         砂利道が終わった
         
         ふるいにかけた悲しみが
         蒸留されて水になり
         目からすっと光って落ちた


   * 挿一輪 *

 お湯が沸くと、湯気が出ます。
 湯気は、冷えて水滴になります。
 
 たとえ、お湯がどんなに濁っていても、
 冷えてできた水滴は、純粋です。
 
 これが蒸留です。
 
 お湯が、グツグツと煮えたぎって、
 ヤカンが、震えるように揺れると、
 いきおいよく湯気が出ます。
 
 まるで、汚れをふるい落とすように、
 体を激しく揺さぶっているようです。
 
 
 悔しいこと、
 悲しいこと、
 辛いこと。
 
 行き場のない怒り。
 
 ふるい落とすように、道を歩きます。
 それも、砂利道を歩きます。
 
 体が揺れて、
 足元を取られそうになりながら、
 感情を、
 砂利に押し込めるように、歩きます。
 
 煮えたぎるお湯のように、
 体を、グツグツと煮えたぎらせて。
 
 しばらくすると、体のなかから、
 熱いものが、浮き上がってきます。
 
 浮き上がって、
 浮き上がって、
 どうしようもないくらい、
 浮き上がって。
 
 まあるくまあるく、水滴がたまり、
 すっと落ちます。
 こころの、蒸留水。
 
 たった一滴かもしれません。
 あとからあとから、とめどなく出てくるかもしれません。
 
 でも、気がつくと、
 砂利道は終わっていました。
 もう、必要がないかな?
 
 さ、顔を上げて。
 こんどは、ゆっくりと、歩きはじめましょうか。
 しっかりとした足取りで。


<第0274号 2006年2月12日(日)>

       なぜ

         なぜ は
         子どもの遊び友だち
         
         陽だまりで
         ころころころがる子犬のように
         
         公園の片すみで
         ごそごそ不気味な逃影のように
         
         お風呂のなかで
         ふわふわ広がるしゃぼんのように
         
         夢のなかで
         ゆらゆら泳げるやさしさのように
         
         なぜ は
         だれにとっても
         くるくるまわる遊び友だち


   * 挿一輪 *

 なぜ、どうして。
 小さいころ、聞きませんでしたか。
 
 小さいころを、忘れてしまったなら、
 だれか、小さな子どもと話したときに。
 
 なぜ、どうして。
 いつまでも聞かれて、
 困ってしまったことはありませんか。
 
 
 そういえば、最近。
 なぜ、どうして。
 あなた自身が、聞いたことはありますか?
 
 家族に、聞かなくなった。
 友だちに、聞かなくなった。
 あなた自身に、聞かなくなった。
 
 なぜ、どうして。
 いつから、聞かなくなってしまったのでしょうか。
 聞かなくなった理由は何でしょうか。
 
 
 なぜ、どうして。
 子どもの。
 
 とても楽しそうに、聞いていませんか。
 答えてあげても、聞いているのか聞いていないのか、
 答えはどうでもいいのとばかり。
 
 なぜ、どうして。
 次々と、最後は笑いころげながら。
 楽しんで、遊びのように聞いています。
 
 
 なぜ、どうして。
 大人だって、楽しいことは好きなはずです、きっと。
 それなのに。
 
 つまらなくなってしまったからでしょうか。
 辛くなってしまったからでしょうか。
 もっと大変なことができたからでしょうか。
 
 なぜ、どうして。
 あなたも、遊びながら、笑いながら。
 聞いてみてください。
 
 まわりのだれかに。
 だれもいなかったら、あなた自身に。
 
 答え?
 すぐに、出さなくても大丈夫です。
 答え?
 すぐに、わかる必要ありますか。
 
 
 なぜ、どうして。
 一緒に、笑いころげながら、遊んでいると。
 いつか、ひょいと答えが顔を出します。
 
 なぜ、どうして。
 そしたら、答えと一緒に。
 また、新しい、
 なぜ、どうして。
 を、連れてきて。
 増えた仲間と、遊びませんか?


<第0273号 2006年2月9日(木)>

       シンクロ

         まっすぐに
         前だけ見ていても
         ぐるりと
         球の視線になれるとき
         
         ひっくりかえって
         空を見るだけで
         そのまま
         空になれるとき
         
         目をつぶって
         あなたを想うだけで
         いつのまにか
         一緒に並んでいるとき


   * 挿一輪 *

 波長が合う。
 
 何もしなくても、
 意識しなくても、
 大好きなものと、自然にシンクロすることがありませんか。
 
 
 ただ、前を見て歩いているだけなのに、
 まわりにあるものの、小さなものまでも見えてしまう。
 
 足元の、小さな草、春の予感。
 毛づくろいする、路地裏のネコ。
 隠れるような、店の看板。
 
 
 気持ちの良い場所で、ひっくり返って空を見ると。
 からだの境が溶けるようになくなって、
 空と、自分がひとつにつながっている。
 
 遠く離れていても、
 こがれるだれかを想うだけで、
 空間を飛び越えて、
 その場を共有できてしまう。
 
 
 相対する二つの波長が、しっかりと合うだけで、
 一見、奇跡のような、シンクロが起こります。
 
 きっかけは、何だったのでしょうか?
 呪文、超能力、テレパシー?
 
 違います。
 あなたがこころを開いたことです。
 
 あなたの波長が、自由に飛び出したからです。
 出会った波長を、そのままつれてきただけです。
 
 いのちが、やすらぎを求める波長は、
 自然の波長と、他のいのちの波長と、
 シンクロするはずです。
 
 さあ、そっと始めてみてください、
 あなたの波長を解放することを。
 
 きっと今なら、生まれたての春と、
 ぴったりと合うかもしれませんね。


<第0272号 2006年2月5日(日)>

       雨あがり

         雨あがり
         子どもの声の光が響き
         
         雨あがり
         とんびの声が空に匂う
         
         雨あがり
         真っ赤なポストが手紙を誘い
         
         雨あがり
         洗った後れ毛に虹が立つ
         
         雨あがり
         この日のために雨を待ちたい
         この日のために雨を呼びたい


   * 挿一輪 *

 雨あがりの陽ざし。
 雨あがりの陽だまり。
 
 光、音、匂い、風。
 
 雨あがりの、このさわやかさと胸の高鳴りのためなら、
 雨を、招き入れたくなります。
 
 ふと、だれかに手紙を書いてみたくなったり。
 鳥の鳴き声に、空へ誘われ、
 そのまましばらく、空をいっぱいに吸い込んでみたり。
 
 ふだん、気がつかないような、小さなきらめきを見つけたり。
 飛び込んできた音が、光のようにまぶしかったり。
 
 なぜでしょうか?
 
 雨が、いろいろなものを洗い流してくれたから?
 雨が、じっと待つことを教えてくれたから?
 
 ほんとうは、驚きではないかと思います。
 
 あ、雨があがったんだ。
 思わず、そのことばを口にして、
 キョロキョロと、子どもになったように、まわりを見まわして。
 
 そのときに、いま、初めて見たような、
 いつも見慣れたものたちの、再発見の驚き。
 
 こころもそうですね。
 辛いこと、悲しいことがあって、落ち込んで、泣いて。
 泣き疲れて、泣き止んで、ふと、軽くなったこころに気がついて。
 
 さあ、もう涙をふいて、そっとまわりを見まわして。
 笑いかけてくる、たくさんの、光、音、匂い、風。
 
 ほら、見つかりましたね。
 
 それが、
 あなたの、
 こころの、
 雨あがり。


<第0271号 2006年2月2日(木)>

       ふわり ふわり

         赤ちゃん ふわり
         背負っているお母さん
         ふわり ふわり
         
         満月 ふわり
         あおぎみるお父さん
         ふわり ふわり
         
         ゆめのように
         かげろうのように
         こころの子守唄
         ふわり ふわり


   * 挿一輪 *

 赤ちゃんをおんぶしているお母さんが、ゆれています。
 なかなか泣き止まなかったのかな。
 そろそろおやすみの時間かな。
 
 右にゆれて、左にゆれて。
 ぽっかりと陽だまりに出たら、
 ふわりふわりと浮かんでいるみたいで。
 
 帰宅をいそぐお父さんの足が、ゆっくりになって。
 足元の柔らかな影に、気がついたのです。
 いつもなら街灯のない、暗い場所なのに。
 
 ふっと上を見上げて、足元の影を見下ろして。
 思い出した影ふみのように。
 ふわりふわりとついてくるみたいで。
 
 ゆめも、そう。
 しあわせも、そう。
 
 かげろうのように、
 子守唄を歌ってもらったときのように、
 ふわりふわりと浮いています。
 
 せっかちになったり、
 強い力でにぎろうとしたり、
 飛びついたりしたら、
 驚いてしまいます。
 
 ふわりふわりのお母さんの背中のように。
 ふわりふわりのお月様の影のように。
 
 あなたのこころも、
 ふわりふわりと浮かせてくださいね。



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