2022年12月のこびん

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<第1167号 2022年12月25日(日)>

       きめる


         たびのとちゅうで
         ぼくはオリオンによる
         ふるびたえいがかんではない
         てんにかがやくオリオンだ
         
         かなしみがふかいほど
         かがやきはふかくなると
         クルスをむねにかけ
         トナカイはいったっけ
         
         おくりものをもらうのに
         しかくやじゅんいはいらない
         つみやまずしさもいらない
         うけとれるてがあればいい
         
         いのちはびょうどうだ
         えらぶこともびょうどうだ
         ゆめをみることも
         なくことさえびょうどうだ
         
         ひかりはてんではない
         つながるせんのせんとうなんだ
         オリオンのせんたんが
         いままさにむねにささっている
         
         たびはまだつづけられる
         ことばはまだうたいつづける
         いきるというのとおなじいみに
         きめたのはぼくだからだ


         

   * 挿一輪 *

 いちばん好きなことをみつけたなら。
 
 生きることの意味はわかったようなもの。
 
 かなしみやさびしさまで引き連れて。
 
 贈りものを受け取りにゆこう。


<第1166号 2022年12月18日(日)>

       あじわう


         あおいそらの
         こぼれそうな
         ジュース
         
         からだを
         ストローにして
         つきさす
         
         からだのなかの
         いままでを
         すべてはきだし
         
         さあ
         おもいっきり
         すいこもう
         
         すみずみまで
         すみきったいまで
         みたすために


         

   * 挿一輪 *

 雲ひとつない、冬の青空。
 
 とっても、おいしそうです。
 
 からだを思いっきり伸ばして、空に突き刺すように。
 
 どんな味がするのでしょうか、じっくりと味わってみてください。


<第1165号 2022年12月11日(日)>

       かぐ


         ひなたの
         ねこの
         あたま
         
         ひなたの
         ねこの
         せなか
         
         ひなたの
         ねこの
         おなか
         
         ひなたの
         ねこの
         しっぽ
         
         どこもおなじ
         おひさまの
         におい


         

   * 挿一輪 *

 冬の朝、陽だまりで。
 
 寄ってきたねこと、しばし遊び。
 
 ずっと陽だまりにいたのでしょう、おひさまの匂いが、ぽっと。
 
 見上げた空は、雲一つない、さ青。


<第1164号 2022年12月4日(日)>

       きく


         いっぽんの
         のろしがあがる
         きけ と
         
         いっきの
         ひこうきがのこす
         きけ と
         
         ことばは
         きごうをすて
         みみにしみこむ
         
         なにをつたえたいか
         よりも
         なにがつたわったか
         
         わたしたちは
         つごうのよいように
         いきている
         
         だれよりも
         かみさまよりも
         じぶんにとって
         
         みみはつくられたけれど
         きくことは
         あたえられたものじゃない


         

   * 挿一輪 *

 聞くことは、耳にゆだねられています。
 
 そう信じて、毎日を生きています。
 
 耳は確かに、音を拾いますが、判断はしません。
 
 判断のためには、耳は要りません。
 
 ほんとうは、音はいつだって自由です。
 
 音を言葉のなかに押し込めて固めたのは、人間の必要悪でしょうか。
 
 空につくられた雲は、耳では聞くことが出来ません。






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