2023年10月のこびん

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<第1211号 2023年10月29日(日)>

       わ


         わたしは
         はじまり
         このいってんに
         たしかにいる
         
         わたしは
         はじまり
         このいってんまで
         つちかったもの
         
         わたしは
         はじまり
         このいってんより
         まっすぐまえへ
         
         さあ わたしをもって
         さあ わたしよすすめ


         

   * 挿一輪 *

 見上げると、さ青の秋空に、飛行機雲の、はじまり。
 
 先頭は、ここにわたしがいる、と、教えてくれます。
 
 しっかりと、そのわたしの形で、前に進んでゆきましょう。


<第1210号 2023年10月22日(日)>

       ろ


         ろじに
         さそわれ
         ふと
         たちどまる
         
         ひだまりに
         かげ
         かぜ
         おいぬいて
         
         おともなく
         こぼれる
         えみ
         ゆめうつつ
         
         あきのすなどけい
         ろじのおもいびと


         

   * 挿一輪 *

 路地が好きです。
 
 初めての道は、ドキドキしながらそっと歩きます。
 
 たいてい、しんとして、なにかが、じっと見ています。
 
 どこかなつかしく、どこか笑みがこぼれる気持ちです。


<第1209号 2023年10月15日(日)>

       れ


         わたしだったら
         はれたあきの
         かぜになり
         
         かがやく
         れもんの
         ぼうすいけい
         
         さあおのそらの
         まなかにおいて
         つんとかおる
         
         はなのおくに
         にじみくる
         なみだのあじを
         
         せせりのくちで
         さぐろうか


         

   * 挿一輪 *

 レモンが好きになったのは、梶井基次郎の「檸檬」を読んでからです。
 
 書店の本の上に、レモンを放置するという話、とても、好きです。
 
 でも、レモンを空に浮かべ、蝶の口で吸ったなら、どんな味が。
 
 あの、紡錘形の黄色い果実から、秋の空が味わえるのでしょうか。


<第1208号 2023年10月8日(日)>

       る


         ルリタテハがすき
         ななつのたからの
         そのひとつのいろを
         はねにもつちょう
         
         ルリタテハがすき
         ことばのひびきが
         すんだあきのそらに
         すいこまれるのが
         
         ルリタテハがすき
         いつからだろうか
         とおいめでみつめる
         そのことばだけで
         
         ふっとつぶやくだけで
         るりいろのゆめになる


         

   * 挿一輪 *

 リズミカルで覚えやすく、好きな名前が多い蝶の名前。
 
 イチモンジセセリ、アオスジアゲハ、ルリタテハ。
 
 瑠璃は、七宝のうちのひとつ、とても神秘的な力を持つとのこと。
 
 タテハチョウは、羽を閉じると見つけにくいほど地味な蝶ですが。
 
 羽を開いたとき、二本の瑠璃に目を奪われるのが、ルリタテハです。


<第1207号 2023年10月1日(日)>

       り


         り
         はじまりは
         うかがうように
         さぐるように
         
         りり
         たしかめる
         いのちのじゅもん
         ああこれでいい
         
         りりり
         もうまよわない
         わたしはここ
         あなたにとどけ
         
         りりりりりりりり
         りりりりりりりり


         

   * 挿一輪 *

 昼間でも、虫の声が響くようになりました。
 
 夕暮れをむかえると、押し寄せて耳が痛いほど。
 
 少しでも大きく、少しでも長く。
 
 いのちの限りに、あなたはどこ、わたしはここ。






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