2024年2月のこびん

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<第1228号 2024年2月25日(日)>

       雨の記憶


         雨の日の
         あなたの記憶
         傘の色は覚えているのに
         
         雨の日の
         あなたの記憶
         隠れた顔が思い出せない
         
         雨の日の
         あなたの記憶
         忘れようとしているのか
         
         雨の日の
         あなたの記憶
         滴がにじむしべの鮮やか


         

   * 挿一輪 *

 雨に咲く、花弁は傘、しべは記憶でしょうか。


<第1227号 2024年2月18日(日)>

       青の呼吸


         青は
         どこにでもあるって
         あなたが言うものだから
         
         青は
         空にしかないと
         ずっと思っていたけれど
         
         見慣れた街で
         見知らぬ街で
         歩き回って探してみた
         
         ほらここにある
         あなたは自分の影をうつし
         光の中で青を教えた
         
         作られた青は
         鮮やかにあなたを浮かせたけど
         青の呼吸はしていなかった


         

   * 挿一輪 *

 奥深い色は、呼吸をしています。


<第1226号 2024年2月11日(日)>

       曲


         花が咲くと
         曲が流れる
         
         一輪開くと
         息が生まれる
         
         花は呼吸をして
         旋律は抱擁のように
         
         わたしの身体を閉じ
         わたしの身体を開き
         
         つぼみの目覚めと
         いのちの出だし
         
         咲く咲く咲く
         空は青い全音符


         

   * 挿一輪 *

 ふっと曲が流れるその瞬間、理由があります。


<第1225号 2024年2月4日(日)>

       咲く


         少し前まで
         影だった枝に
         小さな笑みが届けられ
         
         少し前まで
         うつむいた顔に
         懐かしい匂いが届けられ
         
         時が揺らいだ陽だまりで
         わたしは優しい扉を開けた
         
         ひとつ手前の季節のなかで
         新しい季節は目くばせをして
         
         ひとつ手前の悲しみのなかで
         新しい涙は芽吹きになる
         
         さあこの贈り物
         誰にそっと届けよう


         

   * 挿一輪 *

 笑むことは、咲くことです。






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