***  4月の詩  ***

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 逆上がり


逆上がり
満開のサクラの下で

一本の鉄の棒が
いまの宇宙の中心の軸

いちばん近い惑星がわたし
次がサクラ
その次が雨上がりの地面
そして雲ひとつない空

ぐるりと回る
サクラが回る
濡れてほくほくした大地が回る
果てのない青空が回る

遠心力はすごい
わたしの中の嫌なこと
むしゃくしゃしたこと
どうしても離れなかったもの
ぐるりと回るとみんな後ろに飛んでゆく
振りちぎってゆく

サクラに飛んでゆく
頭の上の大地に飛んでゆく
はるか下の飛び入りは
まっすぐに伸びてゆく飛行機雲

逆上がり
満開のサクラの下で

軽くなって軽くなって
風になったわたしが回る

 待つ


待つ
会うために待つ

ただじっと待つのではなく
わたしを
あたためて待つ

待つ
あなたを待つ

ただ思い悩むのではなく
あなたを
せいいっぱい見るために待つ

だれかが待つのではない
わたし自身が待つのだ

だれかに会うのではない
あなた自身に会うのだ

だから
待って会うのなら
それは深い呼吸のように確かなはずだ
会うために待つのなら
それはいのちそのものがみつかるはずだ

待つ
生きている主人公として
二人のために
待つ


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