***  5月の詩  ***

戻る


 五月の光


五月の光を浴びに
ささやかな旅に出る

五月の光は新緑の
一枚一枚の葉の皮膚に
ひとつひとつの草花の顔に
こぼれんばかりに溶けんばかりに
ひっかいてひっついて
子猫のように遊んでいる

五月の光に告げて
透明な風のつぶやきが
すいつき寄せ合い
とどまることなく渡り続けて
ひんやり小藪にかくれんぼ

みつける鬼は
水晶鏡の目くらまし
ピカリひらりのちょうの羽
追って追われて
山の端の扉に迷いこむ

もういいかい
なんていわない不意打ち模様
まあだだよ
なんていわない意地悪刺繍

次の光が目の玉くるり
くるくるくるりと転がすうちに
もう見渡す限り
鬼に食われて五月の光

見つけるものを忘れてしまい
見つけられるものも忘れてしまい
ただただ五月のまんなかで
光の石蹴り 光のおはじき
みんながそろってはないちもんめ

五月の光になるために
小さな帰らぬ旅に出る








5月の詩 五月の光

5月の詩 五月の光

Copyright© 2011 Shiawase no Kijun